多くの企業が何かしらの人事システムを導入しているかと思いますが、スプレッドシートやExcelでの作業はどうしても発生します。
むしろ、それらを上手く組み合わせることで、柔軟性のある業務運営になると考えています。
但し、スプレッドシートやExcelの使用方法を間違えると、本来のメリットを享受できず、ミスや長時間労働にも繋がります。
本記事では、人事担当者であれば避けては通れない「従業員情報管理」の基本について共有します。
引き継ぎマニュアルには「Excelファイルを更新」って書いてあるけど、全部値貼りになってて分からねぇーーー!!!
関数で仕組み化されていないシートなんて、センスないわね。
同じことにならないよう、まずはこの記事を読んでみて。
従業員コードを検索キーにする
検索キーって何すか?!
関数で検索したい値のことよ。
VLOOKUPなら、
=VLOOKUP(検索キー, 範囲, 列指数, 検索方法)
という感じで最初に指定してあげてね。
よくあるNGケースで、「従業員名」を検索キーにしたVLOOKUPを目にしますが、ミスの元なので絶対にやめましょう。
具体的には、以下のような場合にエラーが発生します。
- 改姓があった時、データベースによって情報反映にタイムラグがある
- 姓と名の間のスペース有無が統一されていない
- 同姓同名がいる
- 手入力した時の漢字変換ミス(そもそも手入力がNGだが…)
つまり、なるべく変わらないものがキーとしては望ましく、なおかつ個人を特定できる情報として「従業員コード」が適任なのです。
「従業員コード」は、入社時に付番してからは雇用形態変更等がない限りは原則として同じものを使い続けます。
また、シンプルであることも重要です。
多くの場合はアルファベットと数字の組み合わせになるため、変換ミスも起きづらい仕組みになります。
最新情報は人事システム内で管理する
従業員情報に変更があると、ついついスプレッドシートやExcelで管理しがちですよね。
そのような方は、今すぐに人事システム内で情報集約する癖をつけましょう。
理由は、手作業でメンテするシートが増えるほど「直し漏れリスク」が高まるためです。
挙句の果てには「どの情報が正しいのか」分からなくなる場合もあります。
また、給与計算等、人事業務のあらゆるシーンでマスタデータを紐づけるため、システムが最新化されていることはもはや大前提なのです。
Excelでポチポチ直したほうが早くないですか?
目先のことだけ考えてはダメ。
使用するシステムは会社によって異なるけど、正しい給与計算を行うためには全てに言えることね。
人事はデータの精度・鮮度が命!
セキュリティ面も踏まえ、必ずシステム内でマスタデータを管理すべし!
(誰?!)
従業員情報にアップデートがあれば、なるべくこまめに人事システムを更新することをおすすめします。
とはいえ、影響範囲が少なく、給与支給までに更新すれば良いような項目であれば、一括インポート(CSVファイル等)する方が効率的な場合もあります。
そして、資料作成等を目的として、スプレッドシートやExcelで作業する際には、人事システムからエクスポートして使用するようにしましょう。
アウトプットはバックデータを貼り替えて更新する
スプレッドシートやExcelで資料作成や分析を行う場合、バックデータの貼り替えのみで更新可能な仕組みを心がけましょう。
まず、シート1はアウトプットとして全て関数で作り上げます。
罫線や条件付き書式等の見映は、最後に整えると良いでしょう。
そして、シート2はバックデータ(参照先)として貼付用にします。
ポイントは、シート2が元のデータベースをそのまま貼り替える(加工しない)だけで済むようにシート1を作ることです。
ちょっと何言ってるか分からない。
あなたが一番はじめに文句言ってたことよ!
例えば、従業員のリストを作ったり、勤怠情報から働き過ぎている人を抽出する時。
元となるデータを切り貼りして作業しちゃうと、後で同僚が見た時に工程が分からないし、自分でもどうやったか思い出せない。悲惨よね。
そうでした!
おそらく従業員のデータを何かの条件でフィルターしたみたいですが、不要な行が削除されているので、抽出条件も分かりません…。
そういうやり方をしているから、作業がどんどん属人化して、みんないつまで経っても忙しいままなのよね。
大事なのは仕組み化!
はじめは大変だけど長い目で見れば自分や周囲の人が楽になるから頑張って!
資料作成の元となるデータベースの多くは「行(対象者)やセルの値(内容)は情報更新があるけど、列(項目)の並びは変わらない」ものだと思います。
バックデータの枠さえ変わらなければ、アウトプットするシートは関数で表現できそうですよね。
もし関数で作り上げることができれば、以降のデータ更新は「貼る替えるだけ」で完了するわけです。
その「関数で表現する」ところができません…。
色々な関数があるけど、人事業務では特定の従業員をピックアップする作業が多いので、まずは「QUERY関数」を覚えることをおすすめするわ!
QUERYとは、条件指定によって、データベースから必要な行と列を自在に抽出できる関数です。(スプレッドシート限定)
活用すれば、シートをフィルターしたり、不要な列・行を削除する非効率的な作業も撲滅することができます。
しかし、便利な半面、入力規則が多いことからとっつきにくいと感じる人もいるようです。
こちらの記事では、QUERY関数の基本構造について解説しているので、業務効率化に向けて是非お役立て下さい。
- 従業員コードを検索キーにすることで、ミスを防止できる
- 最新情報を人事システム内で管理することで、日常業務の精度が向上し、セキュリティもを担保できる
- 「貼り替えのみ」で更新できるように徹底することで、作業工数の削減と属人化の解消に繋がる
用語集
- Excel
Microsoftが提供している表計算ソフト。
機能が充実している一方、新規導入やバージョンアップには費用が発生。 - スプレッドシート
Googleが提供している表計算ソフト。
Web上のアプリケーションであることが特徴。
そのため、PC等へのインストールは不要だったり、リンク共有により複数人による同時編集も可能。
Googleアカウントさえあれば無料で使用可能。 - CSV
カンマで区切られたテキストファイルで、互換性の高さが特徴。
そのため、上記のスプレッドシートやExcelのみならず、メモ帳や様々なソフトウェアに取り込んで閲覧・編集することも可能。 - 人事システム
人事管理における様々な機能を持った基幹システムを指す。
大企業であれば自社開発している場合もあるが、特に中小企業ではコスパの良いクラウドソフトを導入しているケースが多い。
人事労務freee、SmartHR、ジョブカン労務HR等が挙げられるが、それぞれ強みやカバー範囲は異なるので、自社の運用にあわせて選定することになる。 - マスタデータ
経営管理の基礎となるデータベース。
「どの情報が正しいの?最新なの?」と聞かれて、差し出せるものでなければいけない。
人事では給与計算や人事考課等、あらゆるシーンでマスタデータが根拠になるため、システム上での管理が基本である。 - (一括)インポート
システムに対して、複数のデータを一括で取り込むこと。
従業員規模が数十人、数百人になれば、勤怠設定や諸手当を一件ずつ登録するわけにはいかない。
多くのシステムで(互換性の高い)CSVファイル形式に変換したものを取り込めるように実装している。 - エクスポート
インポートの反対で、システム内のデータをCSVファイル形式等で出力すること。
システム内の情報を常に最新化しておけば、メンバーが各自でアクセスし、データを活用できる。(メンバー間のデータ授受が不要になる) - 値貼り
スプレッドシートやExcelにおける貼り付け形式の一つ。(正式には「値貼り付け」)
データ値のみをコピペしたり、数式を値に変換したい場合に使用。
関数で仕組み化されたシートを、誤って値貼りしてしまうと「シートを壊した」と責められるので注意したい。
また、他のメンバーから仕事を引き継いだ時、シートが全て値だった時はうんざりする。