今年もメジャーリーグで大活躍している大谷翔平さん、その成功の秘訣に誰もが注目しています。誠実な姿勢でゴミを拾ったり、試合前に球審や相手監督に挨拶をするなどの行動にヒントがあるのではないかと言われています。
彼の成功の背景には、特定のマインドセットがあるのではないかと噂されています。その中でも読書家であることが知られており、2023年4月11日のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」で紹介された愛読書の一つが中村天風著『運命を拓く』です。
筆者もその放送を見て書店に行きましたが、在庫切れで取り寄せとなりました。ようやく手にした際の印象は「聞き慣れない言葉が多く、文体も古くて難しい…」というものでした。しかし、何度も読むうちに理解が深まり、日々の思考と行動が大きく変化しました。
今回はこの難解な名著を図解で分かりやすく要約します。
これを機に、実際に本書を手に取り、トレーニングのように何度も読むことをお勧めします。
中村天風とは何者か?
まずは著者について、簡単に紹介します。
中村天風は、1876年生まれの男性。
日露戦争中に軍事スパイとして活動し、終戦後に結核を発病。心身の弱さから人生の真理を求めて欧米を遍歴するも、満足な答えを得られず失意の中で帰国を決意。
その帰途でヨガの聖者と出会い、ヒマラヤの麓で「自分は宇宙の力と結びついた強い存在だ」という真理を悟り、病を克服し運命を切り拓く。
帰国後は実業界で活躍するも、1919年からは「心身統一法」を創見し、講演活動を開始。自身の波乱の半生から得た「人生成功の哲学」は多くの人々を魅了し、皇族や政財界の重鎮たちが「生涯の師」として心服。
1968年に没後も、多くの弟子が天風の教えを受け継いでいる。
本書は、中村天風が宇宙、生命、人間、人生について説いた内容を、弟子たちが彼の語り口、呼吸、迫力をそのまま再現して編集したものです。
また天風哲学の説得力を強めているのは、彼が西洋医学にも精通し、その上で極めて論理的に話を展開している点です。
単に「ポジティブに思考しましょう」や「善い行いで運気を上げましょう」といったスピリチュアルなカテゴリーではなく、論理的に「確かに…!」と思わせてくれる一冊です。
中村天風著『運命を拓く』が難しい要因
宇宙エネルギーの概念
序章で心が折れる読者も多いでしょう。前提を理解していないと本題に進めないため、丁寧に説明されていますが、それが障壁となっているようです。
すぐに「宇宙エネルギー?」「霊?気?なんか胡散臭いな…」となって、本書を閉じたくなるでしょう。
- 宇宙霊
- 宇宙本体
- 根本的本源実在
- エーテル
- 先天の一気
まずこれらは全て同じ意味で、形のある宇宙を創った大元の存在を指しています。本書では基本的に「宇宙霊」という言葉を使っていますが、ぶっちゃけ呼び方はどうでもいいそうです。
この宇宙霊は、無限の創造エネルギーを持つ唯一無二の存在であり、皆さんの知る宇宙をはじめ太陽や地球、人間やバッタも創り出しています。
その中で、霊長として人間だけに与えられている特別な力が「創造する力」です。宇宙霊が同じ創造のエネルギーを人間に対して送り込んでおり、宇宙霊と人間はエネルギーを送受信するパイプで繋がっています。それは小さな川でも辿れば大海原に繋がっているように、本質的には一つのものであることを意味しています。
創造とは「建設」「積極」というプラス方向の動きを指し、人間の運命や健康を良くする力と解釈できます。
そのように考えると、人間は悩むため苦しむために生まれてきた訳がなく、むしろ「楽しい!嬉しい!」というプラスのエネルギーで満ち溢れた存在として生きるべきなのです。
宇宙エネルギーと心の関係
宇宙エネルギーを人間が受信するツールが「心」であり、その心を活動させるのが「思考」です。
思考が宇宙エネルギーの受け入れ効率を決定しており、本書では「人間の心で行なう思考は、人生の一切を創る」と述べています。
心は宇宙と人間をつなぐパイプであり、その受け入れ口の形状は思考によって決まります。本書ではこれを「観念の型」と呼んでおり、心が積極的(プラス)に思考すれば多くの宇宙エネルギーを受け入れることができ、逆に消極的(マイナス)な思考をすればその受け入れ態勢が妨げられてしまいます。
また心には「実在意識」と「潜在意識」の2つの領域があり、実在意識は五感で認識している日常の世界です。一方、潜在意識は肉体・精神に大きな影響を与えており、心臓の鼓動や呼吸、細胞の再生能力など、意識していないところで驚くべき創造的活動が絶え間なく繰り返されています。
そこで「どうにかして潜在意識に働きかけられないか?」という疑問が生じますが、潜在意識に影響を与えるのは実在意識を通じて接触するものです。本書ではこれを「同化的に活動」と表現しています。つまり、実在意識で心の思考を積極(プラス)方向にするか消極(マイナス)方向にするかによって、絶大な影響力を持つ潜在意識の働きが良くも悪くも変わるのです。
最も身近な例でいうと、「病は気から」という言葉はまさにそれを表しています。
おさらいすると、思考が宇宙エネルギーの受け入れ効率をコントロールし、最終的に運命や健康を決定づけるということです。
実践編:運命を拓くには?
観念要素の更改
積極思考の秘訣は、すべてを「感謝」と「歓喜」に振り替えることです。これを続けることで、宇宙エネルギーの受け入れ口の形状、つまり観念の型を積極(プラス)方向に更改していきます。
これは感情の反応を「感謝」と「歓喜」に変換するという話ですが(受動的)、基本的なマインドセット(能動的)としてはどのように心がけるべきでしょうか。それは「真」「善」「美」の3つです。
- 「真」は、嘘偽りがなく筋道が少しも乱れていないこと。
- 「善」は、偏りのない愛をもって接すること。
- 「美」は、調和が取れていること。
本書では「宇宙霊の心にはこの3つしかない」とされています。どんなことがあっても「真」「善」「美」の気持ちでいることで心は積極的になり、宇宙エネルギーをより多く受け入れることができるのです。
反対に、最も避けるべきは「恐怖」観念です。これは強烈な印象力があるため、観念の型を消極(マイナス)方向に捻じ曲げ、宇宙エネルギーの受け入れを阻害し、その「恐怖」を現実化してしまいます。
本書では「神経を過敏にするな」とよく言われていますが、何事にもやたら悲観したり心配したりするのを止めて、序章にあったように「人間は何のために生まれてきたのか?世の中を創造的に進化・向上させていくためだろう!それが霊長の役割だ」と積極(プラス)方向から考え直すことが大切です。
その土台には「つらい!悲しい!苦しい!というのは所詮、自分の心で決める評価である」という考え方があります。何か失敗しても「どこかやり方に間違いがあったことを天が教えてくれたんだな、サンクス!」と感謝に振り替えたり、何か病にかかっても「大変だけどこうやって生きていられるじゃないか、グッド!」と歓喜に振り替えていくことが、観念要素の更改です。
これを聞いて「そんな頭の中お花畑でいられるわけなかろう!辛いんじゃ!痛いんじゃ!」と思う人がいるのは理解できます。しかし、「辛い!痛い!人生オワッタ!」と言い続けていれば、現状が好転するのでしょうか。そうではありませんし、むしろそういう方向に運命や健康が向かっていくだけです。その時間も無駄にしています。
どうしても迷いや不安が消えないときは、冒頭で紹介したような宇宙霊と人間の関係性を改めて考えてみることをお勧めします。きっと前向きになれるはずです。
思考の現実化プロセス
観念要素の更改が進むと、日々の「思考」が変わります。
そして心には様々なイメージが浮かぶようになります。これが「想像」です。本書では、この「想像」を下絵と表現しています。
やがてこの下絵が「理想」をアウトプットし、そこに宇宙エネルギーが注ぎ込まれることで現実化していきます。
つまり、思考→想像→理想→成就というプロセスを経て、現実が形成されます。積極的な観念を基に高い理想を描くことで、宇宙エネルギーを多く受け入れることができます。
その結果、運命を拓くことができるのです。
中村天風著『運命を拓く』のまとめ
最後になりますが、中村天風著『運命を拓く』のまとめを以下に記載します。
ということで、今回は中村天風の『運命を拓く』の要約をしてみました。
私の体験談としては、やはり毎日トレーニングのように読むことで思考が積極化するため、実際に本書を手に取っていただくことをお勧めします。
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